下記方法を参考にして下さい。
<試薬>
・0.01M EDTA標準液
・PAN指示薬溶液
・緩衝液 酢酸-酢酸ナトリウム混液(pH2.5~6)
・メタノール
<操作>
・試料溶液(Cu 30 mg以下)は約75 mLに希釈し、緩衝液を加えてpHを2.5~6に調整する。
次にメタノール25 mL,PAN指示薬溶液数滴を加え、0.01M EDTA標準液で滴定する。
終点の変色は 赤→黄。 Cu含量の多い場合には 赤→青緑。
0.01 M EDTA 1 mL = 0.6355 mg Cu
<備考>
・Cu-PANキレート化合物は水に難溶なコロイド状沈殿を生成するため終点付近でEDTAとの
反応速度が遅い。したがって熱時滴定するか、上記操作のようにCu-PANの溶解度を増すため
25~50%有機溶媒を添加する必要がある。有機溶媒としてはメタノールのほか、エタノール,
イソプロパノール,ジオキサン,ジメチルホルムアミドなど水と混合しうる溶媒がメタノールと
同様にもちいることができる。また、グリセリン,エチレングリコールのように沸点の高い溶媒を
添加して、熱時滴定すれば、加熱効果と溶媒効果を同時にあげることができ、
終点が明瞭になるといわれている。Cu-PANをもちいる直接滴定においても同様の効果が得られる。
・Cu2+はpH2.5~10の範囲で滴定することができるが、低いpHで滴定するほど共存イオンの影響は
少なくなる。たとえばpH4~5で滴定すればアルカリ土類金属イオンおよび少量のMn2+は影響せず、
またpH2.5~3で滴定すれば、そのほか少量のZn,Cdが共存しても影響しない。
pH7以上ではアンモニア-塩化アンモニウム系緩衝液をもちいるが、このpHではアルカリ土類金属を
はじめ多くの多価金属イオンが存在する場合は一部ないし全部滴定にかかってくる。
・酸性領域(pH4~5)ではZn2+,Cd2+,Pb2+,Hg2+などは一緒に滴定されるが、Cu2+はチオ硫酸ナトリウム,
チオ尿素などによって選択的にマスクされるので、PANを指示薬として上記操作によって滴定して
これら金属イオンの合計を求め、次にCu2+をマスクした後、適当な指示薬をもちいてCu2+以外の
金属イオンの量をもとめ、二つの滴定値の差からCu2+の量を算出することが出来る。
あるいは次のような方法もとることが出来る。
§Cu2+を含む試料溶液に酢酸塩緩衝液(ヘキサミンはCu2+の場合よくない)を加えpH4~5にする。
§10%Na2S2O3(チオ硫酸ナトリウム)溶液を溶液が無色になるまで加えCu2+をマスクしたのち
Pb,Hg,Zn,Cdなどを滴定する。もしこれ以上過剰に加えると、Zn,CdなどもNa2S2O3と反応し、
終点における指示薬の変色が不明瞭になる。指示薬はNa2S2O3を添加した後で加える方がよい。
通常Cu2+15mgをマスクするのに10%Na2S2O34~5mLで十分である。
§滴定を終わった溶液に30%H2O2数滴を加えればCu2+がデマスクされるので、ひきつづき滴定し
Cuを定量する。
・PAN指示薬による滴定にならって、PARを指示薬とすれば、常温で直接滴定できる。
またTARを指示薬とすれば、pH4~6の領域で常温にて滴定できる。
終点の変色は 赤紫→黄 で、Cu2+に対する指示薬のうちで最も変色が鋭敏である。
・酢酸塩緩衝液をもちいpH4~6にて、XOまたはMTBを指示薬とし70℃以上に加熱滴定する事ができる。
加熱はブロッキングを避けるためで、ごく少量のオルトフェナントロリンえお添加するか、
緩衝剤にMESを用いれば、常温で滴定することもできる。また、逆滴定でCu2+を定量するときには
Cu2+のブロッキングはおこらないので、Pb(またはZn)標準液-XO指示薬の組み合わせがよくもちいられる。
*「キレート滴定」上野景平著(南江堂出版)より